住所の沿革が証明できない2つのケース
不動産登記において、
住所の沿革が証明できない2つのケースとして
1.所有権登記名義人住所変更登記(以下、「名変」という。)
2.相続登記における被相続人の同一性
があります。
相続登記における被相続人の同一性を証明する場合は、
平成 29 年 3 月 23 日付法務省民二第 175 号通達によって、
権利証(登記済証)を添付することによって、
住所のつながりを証明しなくてもよくなりましたが、
名変においてはそのような通達はありません。
法務局は、
所有者なりすまし防止のため、
名変における住所の沿革の証明は
被相続人の同一性における住所の沿革の証明よりも
より厳格に審査されているように思います。
住所の沿革が証明できないとは?
名変においては、
登記事項証明書の所有者の住所が
現住所と異なっているならば、
登記事項証明書の住所から現住所までの
住所の沿革を証明しなければなりません。
住所が一度しか変更していないなら
住民票を取得するだけでよいでしょう。
住民票には前住所が記載されています。
住所を複数回変更しているなら、
戸籍の附票を取得してみましょう。
戸籍が新しく作られない限り
戸籍の附票には住所の変遷が全て記載されています。
しかし、婚姻や転籍で新しく戸籍が作られたり、
戸籍が改製された場合には、
新しい戸籍が作られます。
この場合、戸籍の附票も一新されてしまいます。
したがって、
古い戸籍の附票を取得しなければ
住所の沿革を証明できないときもあります。
古い戸籍の附票が取得できれば問題ないのですが、
5年という保存期間満了によって、
古い戸籍の附票が破棄されることがあります。
5年以上経過しても取得できる市区町村もありますが、
最近は取得できなくなるケースが多いように思います。
その結果、
登記事項証明書に記載された住所までつながる
古い戸籍の附票が取得できません。
この場合どうしたらよいのか?
という問題が生じます。
下図は平成18年に戸籍が改製されたために、古い戸籍の附票(改製原戸籍の附票)の保存期間5年が経過しているため、登記事項証明書に記載された平成元年の住所までの住所の沿革を証明できないケースです。
役所が改製原戸籍の附票などを
保存期間満了により破棄しているため
住所の沿革を証明できなくなった場合、
代わりに必要となる書類について
統一されたルールは定められておらず、
現状、法務局または案件によって
異なる扱いがなされています。
したがって、
申請する法務局に予め確認する必要があります。
一般的には以下の書類の中から、
いくつかを用意するように指示されることが多いです。
1. 上申書(印鑑証明書付)
2. 登記済証の写し(原本が必要かどうか要確認)
3. 納税通知書
4. 不在住・不在籍証明書
この中で上申書には印鑑証明書を添付する必要があります。
印鑑証明書の取得は、依頼人の負担となり、
2+3でなんとかならないのか法務局にお願いしたりしますが、、
1+2や、
1+3が必要になる事も多いように思います。
4については証明力も弱いため、
個人的に使用することはあまりありません。
いずれにしても、
名変において、
住所の沿革が証明できない場合には、
いかなる書類が必要になるか
法務局に事前に確認する必要があるでしょう。
住所の沿革を証明できないときの上申書のサンプル
上 申 書
大阪法務局枚方出張所 御中 この度、私の所有する後記不動産の所有権登記名義人住所変更登記を申請するにあたり、登記事項証明書上の住所から現在の住所へ至る住所の変遷を証する書面が一部取得することが出来ません。しかし、当該不動産は私の所有するものに相違ありません。したがって、本申請を受理下さいます様よろしくお願いいたします。なお、本件に関して、御庁に対し一切ご迷惑をおかけしません。 不動産の表示 所 在 寝屋川市〇〇町 所 在 寝屋川市〇〇町〇〇番地〇
平成〇〇年〇月〇日 住所 氏名 実印 |
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