住宅ローンを借り入れるときに、同じ金融機関が土地及び建物に抵当権を二つ同時に設定する場合があります。
このような場合において、
抵当権が設定された土地及び建物の登記事項証明書を確認すると、
土地については「1番(あ)」、「1番(い)」
建物については「3番(あ)」、「3番(い)」
と抵当権が設定されているのがわかります。
※番号についてはケースにより異なります。
二つの住宅ローンを完済した後、抵当権を抹消することになりますが、
「2つの抵当権を1件の登記申請書にまとめて申請できるか?」という疑問が生じます。
結論から申し上げて、一括して抹消申請することが可能です。
「抵当権(あ)」と「抵当権(い)」に分けて2件で登記申請することも可能ですが、
1件の登記申請にまとめると登録免許税を節約できるメリットがあります。
抵当権抹消の登録免許税は「1,000円×不動産の個数」ですので
今回のように土地・建物の2つであれば、
1件の申請にまとめると2,000円、
2件の申請に分けると4,000円になります。
「あまり変わらないじゃないですか!」とつっこまれてしまいそうですが、申請書を2枚作らなくてもよいのも大きなメリットといえるでしょう。登記申請書のひな形も通常の抵当権抹消登記の場合と大きく異なりませんので、一括して申請されることをオススメします。
ただし、銀行から送付される抹消書類(解除証書・権利証・委任状など)は抵当権二つ分あると思いますので、1件の登記申請書に2つ分添付することを忘れないようにしましょう。
登記申請書作成における原則と例外は次の法令により定められております。
不動産登記令第4条
申請情報は、登記の目的及び登記原因に応じ、一の不動産ごとに作成して提供しなければならない。ただし、同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一であるときその他法務省令で定めるときは、この限りでない。不動産登記規則第35条
令第4条ただし書の法務省令で定めるときは、次に掲げるときとする。
一~九(省略)
十 同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記が、同一の債権を担保する先取特権、質権又は抵当権(以下「担保権」と総称する。)に関する登記であって、登記の目的が同一であるとき。
関連・類似する登記研究
同一不動産上に設定された債権者を同じくする数個の抵当権抹消登記は、登記原因及びその日付が同一であるときは、同一の申請書で申請することができる。(登記研究401号) |
1個の不動産につき同一の権利者のためにされた数個の抵当権及び根抵当権の設定の登記を抹消する場合において、抹消の原因及びその日付が同一であれば、同一の申請書で抹消の登記を申請することができる(登記研究434号) |
一括申請する抵当権抹消登記申請書の書き方・ひな形
登 記 申 請 書 登記の目的 抵当権抹消 原 因 令和〇年〇月〇日解除※② 抹消すべき登記 権 利 者 大阪府摂津市〇〇町〇番〇号 義 務 者 東京都港区〇一丁目〇番〇号 添付書面 登記原因証明情報※⑥ 令和〇年〇月〇日申請 申請人兼義務者代理人 登録免許税 金2,000円※⑪
不動産の表示※⑫ 所 在 摂津市〇〇町 所 在 摂津市〇〇町〇〇番地〇 |
※①不動産ごとに順位番号が異なるので、順位番号はここでは記載せず「順位番号後記のとおり」と記載します。
※②抵当権抹消の登記原因は、解除・弁済・放棄などがあります。登記原因証明書である解除証書等を確認して該当する原因を記載します。
※③登記事項証明書乙区欄に従い、抵当権の受付日・受付番号・共同担保目録を記載します。
2つの抵当権(あ)(い)は同日付で設定されていますので受付日・受付番号は同じですが、共同担保目録は2つあるはずです。
※④ここに記載する住所氏名は登記記録上の所有者と一致している必要があります。住所等の変更がないか今一度ご確認下さい。変更がある場合は前提として、所有権登記名義人住所(氏名)変更登記をしておく必要があります。
※⑤会社の本店・商号が変更している場合は、登記記録上の本店・商号から現在の本店・商号の変更の経過がわかる変更証明書として登記事項証明書が必要です。但し、会社法人等番号を提供することによって、当該変更証明書の添付を省略することができます。なお、変更証明書のうち現在の会社法人番号と異なる番号が記載されている閉鎖事項証明書については会社法人等番号を提供しても省略することはできません。
※⑥登記原因証明情報として、解除証書、放棄証書、または弁済証書など該当するものを添付します。
※⑦会社法人等番号を提供することによって、資格証明書の添付を省略します。前記※⑤のとおり会社の本店商号に変更がある場合は会社法人等番号を提供することによって変更証明書も省略することができます。
※⑧管轄は不動産の所在地によって決まっております。管轄の調べ方は、インターネットで茨木市の不動産であれば「茨木市、不動産管轄、法務局」、西宮市の不動産であれば、「西宮市、不動産管轄、法務局」のように「不動産が所在する市区町村名、不動産管轄、法務局」と入れて検索して頂ければ、法務局の不動産管轄のページに辿り着き確認することができます。
※⑨前記※④と同様ここに記載する住所氏名は登記記録上の所有者と一致している必要があります。押印はお認印で結構です。
※⑩書類に不備があった場合に法務局から連絡がきますので、連絡先を記載します。携帯電話の方がご都合よければそちらをご記載下さい。連絡がくるのはあくまで書類に不備があったときです。申請が完了しても連絡はきませんので、登記が完了する予定日を登記申請の際、確認するようにしておきましょう。
※⑪不動産の1個につき1,000円となります。
※⑫※①で記載した「順位番号後記のとおり」に従い、不動産ごとに抵当権の順位番号を記載します。
登記申請書のWordファイルダウンロード
抵当権(あ)(い)抹消登記申請書のひな形のWordファイルダウンロード
不動産登記申請書のひな形一覧
★移転関係
▢ 敷地権付き区分建物の所有権移転登記(売買)
▢ 所有権一部移転登記(贈与)
▢ 〇〇持分全部移転登記(財産分与)
★名変関係
▢ 所有権登記名義人住所変更登記
▢ 所有権登記名義人住所変更登記(遺言執行者がする場合)
▢ 共有者の所有権登記名義人住所変更登記
▢ 共有者の所有権登記名義人住所氏名変更登記
▢ 共有者全員一括の所有権登記名義人住所変更登記
▢ 抵当権登記名義人住所変更登記
★抹消関係
▢ 抵当権抹消登記
▢ 抵当権抹消登記(共有者の一人から申請)
▢ 抵当権(あ)(い)抹消登記
▢ 古い抹消書類を使用する抵当権抹消登記
★設定関係
▢ 抵当権設定登記
★その他
▢ 所有権保存登記(建物表題部所有者名義)
▢ 抵当権変更登記(債務者の住所変更)
▢ 抵当権変更登記(免責的債務引受)