遺言を作成することができる人については、
民法で次のように定めております。
1.15歳以上であること。(民法961条)
2.遺言能力を要していること。(民法963条) |
遺言ができるかどうかの基準は、
原則20歳以上であることが必要とされる※行為能力の基準を適用せず、
独自の規定を定めていることになります。
(※行為能力・・・法律行為を独立して単独で行うことができる能力)
「遺言能力」は15歳以上、
「行為能力」については、原則20歳以上と定めていることから、
「遺言能力」は「行為能力」よりも比較的認められやすいといえるでしょう。
つまり、遺産分割協議ができない認知症の人が、
遺言書を作成することができる場合があるということです。
さて、それでは「遺言能力」とはどの程度の判断能力が必要なのでしょうか?
そもそも「遺言能力」があるかの判断は誰がするのでしょうか?
遺言書作成をサポートする「司法書士」?それとも公証役場の「公証人」?
認知症の人が「遺言能力」があるかどうかを判断することは非常に難しい問題です。
認知症といっても、程度がさまざまだからです。
結局のところ「司法書士」も「公証人」もお医者さんではないので、
「遺言能力」を有しているかについて正確に判断することはできません。
しかしだからといって、
認知症の人から一律に遺言をする機会を奪ってはならないと思います。
このような背景から、
たとえ公正証書遺言を有効に作成しても、
遺言自体が将来無効となってしまうケースが起こり得ます。
このようなことを防ぐために、
公正証書遺言を作成する際には、
「軽度の認知症が認められるが遺言能力はある。」といった趣旨の医師の診断書
を用意しておく必要があるといえるでしょう。
司法書士や公証人が遺言者が遺言能力を有しているのか?
正確に判断できないのは前述したとおりですが、
遺言者が自分の住所氏名、生年月日も言えないような場合は、
公正証書遺言を作成するのは難しいと言わざるを得ないと思います。
また、公正証書遺言を作成するための要件として、
「遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。」(民法969条)
というものがあります。
これは、遺言者が公証役場に行って、公証人の目の前で
「〇〇に〇〇を相続させる。」といった遺言の内容を
自分の口で公証人に伝えるということです。
公証人が遺言の内容を読み上げて、遺言者がそれに頷くだけでは足りません。
最低限これを行うことができるのか?
これは1つの判断材料になるのかもしれません。
遺言が有効といえるためには、
遺言の内容を遺言者がしっかり理解している必要があります。
遺言能力が疑われる場合には、
「〇〇の財産は〇〇に、〇〇の不動産は売却して〇〇と〇〇で分ける。」
といった複雑な内容の遺言ではなく、
「一切の財産を〇〇に相続させる。」
といったできるだけシンプルな遺言にしておいた方がいいともいえるでしょう。