一度も借金を返済せずに任意整理できるか?

どれだけ大きな借金も、

一つの貸金業者からの借金から始まります。

一つの貸金業者から限度枠いっぱいまで借金をしてしまい、

返済日にお金を用意できなくなると、

同じ貸金業者から借入れをしてお金を用意することはできないので、

新たな貸金業者から借金をする必要性が出てきます。

そして、新たな貸金業者へ借金の申込みをします。

新たな貸金業者も限度枠いっぱいまで借金をすると、

また新たな貸金業者へ借金の申込みをすることになります。

これを繰り返して、借金をしている貸金業者の数はどんどん増えていき、

やがて新たに借金の申込みをしても、

新たな貸金業者は貸付けを拒否するようになります。

どこからも借入れすることができなくなってはじめて

債務整理に着手する方も多いことでしょう。

このような経緯を辿るため、

最後の方に借金をした貸金業者には一度も返済しないままの状態で

債務整理に着手してしまうこともあります。

また、別のケースでは、

一時的にお金を用意するために借入れをしただけで、

すぐにそのお金を返済するつもりだったが、

そのお金をだましとられてしまい、

一度も返済することができず債務整理することもあるでしょう。

(高額が当選したとメールを受け取り、その金額を受け取るために手数料が必要と言われ、手数料を支払うために借入れをしてしまった。手数料を支払ったあと、すぐにだまされたと気づいたが、手数料を取り戻すことができず借金だけが残ってしまうようなケース。)

いずれの場合も、当初は本人は借金は返すつもりであったが結果的に一度も返済していないために、貸金業者側から詐欺的な借入れではないか?と主張されるリスクが生じます。

つまり、お金を貸した側から見れば、

お金を貸した直後に、

お金を返済することができなくなったから

債務整理に協力してくれと言われても、

最初からお金返す気なかったんじゃないか?と思うわけであります。

債務整理のうち任意整理については

法的な強制力はなく、あくまで貸金業者の任意の協力に基づいて成り立っているものであります。

したがって、

通常は、3年から5年間の将来利息を0パーセントにして分割和解に応じてくれますが、

一度も借金を返済していないようなケースだと和解交渉は難航します。

状況によっては、全く和解に応じてこないことも予想されるでしょう。

和解に応じる場合でも、1年以内の分割和解にしか応じないなど

通常の場合よりも条件は悪くなります。

この辺も加味して債務整理をする必要があるため、

貸金業者へ債務整理の開始通知を送る前に

充分に依頼人からヒアリングをして対策を講じる必要があるでしょう。

 

任意整理が無理なら、自己破産はどうか?

自己破産手続きにおいて、借金を0にするためには、

免責不許可事由に該当していない必要があります。

返済ができないとわかっていて、借入れをするような詐欺的な借入れがあるような場合は、この免責不許可事由に引っ掛かって、借金を0にできない可能性が生じます。

従って、まずは借金が詐欺的な借入れではないことをしっかり説明して免責不許可事由に該当していないことを説明する必要があるでしょう。

具体的には、一度も返済することなく借入れをした借金の使い道を説明する必要があります。他の貸金業者への返済に充てたのであればその旨証明しましょう。

また、たとえ詐欺的な借入れであると認めざるを得ない場合であったとしてもあきらめてはいけません。その金額が少額であったりするなどその他いろいろな状況を総合的に判断して、裁判官の裁量で、特別に免責を認めてくれることもあります。これを裁量免責といいます。

任意整理であれ、自己破産であれ、

これまでに述べたとおり、

一度も借金を返済することなく債務整理することは、

通常の場合と比べ非常に難しくなります。

しかし債務整理においてはどのような状況であっても、

あきらめず、粘り強く対処していくことで道が開けます。

過去は変えれませんが、未来は変えることができます。

債務整理手続きに着手すると決めた瞬間から、

誠実迅速に正しい行動をとることが何より大切であるといえるでしょう。