相続人の一人が海外に在住している。どうしたらいい?

ここ10年の間に、日本では急速に国際化が進んでいるのはご存知でしょう。

海外から日本に来る方がますます増える一方、日本から海外へ出ていく方も確実に増えております。

相続が発生した時に、相続人の一人が日本におらず海外に在住しているなんてことは、

今の時代なんらめずらしいことではありません。

しかし、海外在住の方が相続人に含まれる場合は、相続における不動産や預貯金の名義変更にておいては、少々手続きがややこしくなります。

それでは、どういった点で相続手続きがややこしくなるのか?見ていきましょう。

 

海外に在住していたら印鑑証明書・住民票が取得できない?

海外に在住しているということは、日本国内に住所を有していないことになります。

つまり、相続による不動産や預貯金の名義変更手続きに必要となる住民票や印鑑証明書を取得することはできません。

そこで、

印鑑証明書に代わる証明書として、サイン証明書(署名証明書)

住民票に代わる証明書として、在留証明書

を取得して頂くことになります。

これらの書類は海外現地にある在外公館(日本大使館、日本総領事館)で取得することができます。

例えば、アメリカニューヨークにお住まいの方であれば、

ニューヨーク日本国総領事館で取得して頂くことになります。

まずは海外にお住まいの相続人の方が、最寄りの日本大使館または日本総領事館がどこにあるかを調べる必要があります。そして申請するための書類を用意する必要がありますので、ホームページや電話で事前に確認しましょう。

各国によって異なりますが、パスポート、滞在資格を証明する書類、現住所及び在住期間を証明する公文書等が必要になる書類の例です。

 

サイン証明書(署名証明書)・在留証明書がどんな場合に必要になるの?

さて、それでは具体的に

1.サイン証明書(署名証明書)

2.在留証明書

が相続手続きのどんな場合に必要か?見ていきましょう。

 

1.サイン証明書(署名証明書)

サイン証明書(署名証明書)は印鑑証明書の代わりとなるものです。

実印(印鑑証明書付)で押印して本人の意思を証明する代わりに、

サイン証明書(署名証明書)によって、

本人が署名したことを証明し、本人の意思を証明することになります。

サイン証明書(署名証明書)には下記のとおり2種類の様式があります。

どちらの様式が必要になるのか手続きによって異なりますので注意しましょう。

(1)本人のサイン自体を単独で証明する様式

→使い勝手はよいが、この証明書を認めないケースがあるので注意。預貯金の名義変更における相続手続きでは、こちらの単独の証明書を使うことができる場合が多い。事前に金融機関に単独で証明するものでよいか確認しておきましょう。金融機関それぞれに原本が必要になることが多いので、予備も含め複数枚取得するようにしておきます。

(2)持参した書類と綴り合せて、当該書類に本人がサインをしたことを証明する様式

→不動産の相続手続きで必要となる遺産分割協議書に署名する場合は、こちら様式の証明書が必要となります。事前に署名していない遺産分割協議書を用意して、日本大使館または日本総領事館に赴いた時に担当者の面前で署名します。予め署名してしまうと証明してもらえませんので、必ず署名は担当者の面前で行います。

 

2.在留証明書

在留証明書は住民票に代わるものです。海外の現住所を証明します。

必要となるケースは、相続において海外に在住の方が不動産を取得し名義人となる場合です。不動産登記簿に権利者である相続人の氏名住所が記載されますので必要となるわけです。

また、預貯金の相続手続きにおいて、1.サイン証明書(署名証明書)に加えて在留証明書も必要になる金融機関もあります。在留証明書も必要かどうか事前に金融機関に確認しておくようにしましょう。