誰が相続人になるかは法律上決まっております。
はじめに確認しておきましょう。
次の表のような順番で相続人が確定します。
第一順位 | 配偶者 2分の1 | 子 2分の1 |
第二順位 | 配偶者 3分の2 | 直系尊属 3分の1 |
第三順位 | 配偶者 4分の3 | 兄弟姉妹 4分の1 |
もし被相続人(亡くなった人)が1億円の莫大な借金を残し、
プラスの財産は何もないような相続が発生してしまった場合、
誰もが相続放棄したくなるでしょう。
その場合、第一順位である配偶者と子全員が相続放棄したらそれで問題ないのか?
第一順位が相続放棄したことによって、
第二順位である直系尊属である父母が新たな相続人になってしまうのか?
その父母が相続放棄したら次は誰が相続人になるのか?
見ていきましょう。
前提となる相続関係図は以下のとおりとなります。
第一順位である配偶者と子全員が相続放棄した。
亡父が今回亡くなった被相続人となりますので、
上記図1のとおり相続人は第一順位である配偶者(相続関係図では母と記載)、長男、長女となります。
第一順位の相続人全員が相続放棄すれば、
下記図2のとおり、
第二順位である亡父の父母(相続関係図では祖父、祖母と記載)が相続人となります。
長男には子(相続関係図では孫と記載)がいますが、
相続放棄の場合には代襲相続(だいしゅうそうぞく)は発生しませんので、子は相続人とはなりません。
※代襲相続とは、相続の開始前に相続人となるはずだった者が先に死亡してしまったために、その相続人の子(直系卑属)が代わりに相続人となることをいいます。
第二順位である直系尊属の父母(相続関係図上では祖父祖母と記載)が相続放棄した。
配偶者及び子全員が相続放棄しましたので、
次順位である父母に相続がまわってくることになりました。
このまま何もしないでいると父母(相続関係図上は祖父、祖母と記載)が借金を相続してしまいますので、
相続放棄をする必要があります。
さて、この時に問題です。
父母が相続放棄した後に相続人となるのは誰でしょうか?
ここで、もう一度最初の表を確認しましょう。
第一順位 | 配偶者 2分の1 | 子 2分の1 |
第二順位 | 配偶者 3分の2 | 直系尊属 3分の1 |
第三順位 | 配偶者 4分の3 | 兄弟姉妹 4分の1 |
第二順位は父母ではなく直系尊属と書いてあります。
直系尊属とは何だったでしょうか?
直系尊属とは、直系という名のとおり、家系図でいえば縦のライン上にいる、自分より前の世代である、父母、祖父母、曾祖父母等を指します。
直系尊属の反対は直系卑属です。直系卑属は家系図でいえば縦のライン上にいる、自分より後の世代である、子、孫、ひ孫等を指します。
第一順位の場合の相続人は直系卑属ではなく、子ですので、
直系卑属である孫が相続するためには、
先ほど申し上げたように子を代襲して相続するしかできないわけであります。
そして、相続放棄は代襲相続の原因となりません。
従って、子が相続放棄した場合に、孫に相続がまわってくることはありません。
これに対して
第二順位は父母ではなく、直系尊属となっております。
従って、父母が相続放棄した場合には、前の代に遡り直系尊属の祖父母が存命であれば、祖父母が相続人となるわけであります。
なお、父母の一方のみが相続放棄して父母のどちらかが相続する場合には、祖父母に相続人がまわってくるようなことはありません。
今回のケースでいえば、父母両名(相続関係図上は祖父、祖母)が相続放棄しましたので、
前の代に遡り直系尊属の祖母(家系図上は曾祖母)が存命ですので、祖母に相続がまわってくることになりました(図3参照)。
第二順位である直系尊属の祖母(相続関係図上は曾祖母と記載)が相続放棄した。
祖母が相続放棄したことによって、
存命の直系尊属は全員相続放棄したことになりましたので、
下記図4のとおり、
第三順位である兄弟姉妹である伯父に相続がまわってくることになりました。
第三順位である兄弟姉妹(相続関係図上は伯父と記載)が相続放棄した。
兄弟姉妹の伯父が相続放棄したことによって
下記図5のとおり
ようやく相続人が不存在となり、
全ての相続人が借金1億円から免れることができたわけであります。
なお、伯父には子である姪がいますが、
第一順位の子に子がいる場合と同様に、
相続放棄によって代襲相続は発生しませんので、
姪に相続がまわってくることはありません。