所有権移転登記、抵当権設定登記、抵当権抹消登記などの委任状は、

委任事項に、

「平成〇〇年〇月〇〇日付登記原因情報記載の通りの所有権移転登記(抵当権設定登記、抵当権抹消登記)」

と記載することによって、

登記原因証明情報の記載を援用し、

「申請すべき登記事項」や

「申請の目的となっている不動産の表示」

を省略することができます。

根拠となっているのは、

昭和39年8月24日民事甲第2864号民事局長通達です。

実務上も、

売買や贈与による所有権移転登記、抵当権設定登記、抵当権抹消登記などでは、

登記原因証明情報を援用する委任状が多く使われております。

 

一方で、

所有権保存登記、

所有権登記名義人住所変更登記、

相続による所有権移転登記、

はどうでしょうか?

 

「申請のすべき登記事項」や

「申請の目的となっている不動産の表示」を省略できるのは、

あくまで登記原因証明情報の記載を援用できる場合でありますから、

そもそも登記原因証明情報の添付の必要のない所有権保存登記は、

これらを省略することはできません。

 

所有権登記名義人住所変更登記においても、

登記原因証明情報の住民票や戸籍の附票には、

「申請の目的となっている不動産の表示」がないため、

登記原因証明情報の記載を援用することはできず、

不動産の表示の記載が必要です。

 

また、

相続を原因とする所有権移転登記においても、

登記原因証明情報となるのが戸籍一式のみであるときは、

「申請の目的となっている不動産の表示」がないため、

登記原因証明情報の記載を援用することはできず、

不動産の表示の記載が必要です。

 

 

不動産登記に関する委任状の一覧

▢ 所有権移転登記(相続)
▢ 所有権保存登記
▢ 所有権登記名義人住所変更
▢ 所有権移転登記(売買・贈与・財産分与等)(援用なし)
▢ 所有権移転登記(売買・贈与・財産分与等)(援用あり)
▢ 抵当権抹消(援用あり)
▢ 抵当権設定(援用あり)