息子が銀行から住宅ローンを借り入れて、父親名義の土地に新築建物を建てるような場合は多いと思います。このような場合、通常銀行は、住宅ローンの担保として父親名義の土地と息子名義の建物双方に抵当権を設定します。
住宅ローンを無事完済し、抵当権抹消登記を申請するとき、父親の土地と息子の建物それぞれに設定されている抵当権を1件の登記申請書にまとめて申請することができるのかというおはなしです。
結論は、できます。
登記申請書も通常の抵当権抹消とほぼ変わりません。
ただし、不動産を共有している場合の抵当権抹消登記は共有者の一人だけが申請人となって登記申請できるのに対し、設定者が異なる抵当権抹消を一括申請するときは、設定者の一人だけが申請人となって登記申請することはできません。今回のケースであれば、父親と息子双方が申請人となる必要があるということです。
ではなぜできるか?
まずは、登記申請書作成における大原則を以下の法令で確認しましょう。
不動産登記令第4条
申請情報は、登記の目的及び登記原因に応じ、一の不動産ごとに作成して提供しなければならない。ただし、同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一であるときその他法務省令で定めるときは、この限りでない。不動産登記規則第35条
令第4条ただし書の法務省令で定めるときは、次に掲げるときとする。
一~九(省略)
十 同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記が、同一の債権を担保する先取特権、質権又は抵当権(以下「担保権」と総称する。)に関する登記であって、登記の目的が同一であるとき。
登記申請書作成における大原則は、登記の目的及び登記原因に従い、申請書は不動産ごとに作成しなければならないと定まっております。例外として、同一管轄内の二つ以上の不動産について、「登記の目的」と「登記原因及びその日付」が同じあるときその他法務省令で定めるときであれば一括申請できるとしてます。
今回のケースは、当事者(設定者)が異なるので登記原因が同じとはいえません。したがって、「登記の目的」と「登記原因及びその日付」が同じあるときには該当しません。もうひとつの「その他法務省で定めるとき」に該当しないかどうか不動産登記規則第35条を確認してみましょう。
不動産登記規則第35条に「同一の債権を担保する抵当権に関する登記であって、登記の目的が同一であるとき」とあります。今回のケースは、息子の住宅ローンという同一の債権を担保しており、抵当権抹消登記は抵当権に関する登記といえます。登記の目的も同一ですから一括申請ができるというわけです。
先例でも次のように述べております。
共同担保の関係にある抵当権の登記を抹消する登記の申請は、目的不動産の所有権の登記名義人がそれぞれ異なっている場合でも、同一の申請書によってすることができるが、(以下略〉(昭42.3.13 民事甲305号民事局長回答)