前提としてすべき登記
協議離婚に伴い、夫婦共有名義の不動産の夫持分を妻に財産分与し、妻の単有名義とする「財産分与による〇〇持分全部移転」の登記申請書を見ていきましょう。
まずは、現在の登記事項証明書に記載された共有者である夫や妻の住所氏名に変更がないか/span>確認しましょう。
住所氏名に変更がある場合には、財産分与による〇〇持分全部移転登記の申請をする前に所有権登記名義人住所氏名変更登記をする必要があります。
妻の住所氏名変更登記をすべき理由
妻が新しく取得する共有持分に記載される住所氏名は新しい住所氏名となります。もともと持っていた妻の共有持分について旧住所、旧姓が記載されている場合には変更登記をしないと新しい持分の住所、姓と相違することになります。住所、姓が異なると、登記上別人物と扱われてしまい、本来所有者として記載されるべきところが、二人の共有者がそれぞれ持分を有するような形で登記されてしまいます。これを防ぐためにも事前に住所氏名変更登記をしておくことが望ましいでしょう。 |
★類似ケース
▢ 不動産共有持分の相続登記の場合も住所氏名が相違していないか確認しよう。
★申請書のひな形
▢ 共有者の所有権登記名義人住所変更登記
▢ 共有者の所有権登記名義人住所氏名変更登記
財産分与による「〇〇持分全部移転」登記申請書のひな形
登 記 申 請 書 登記の目的 豊中卓也持分全部移転※① 原 因 令和 年 月 日財産分与※② 権 利 者 大阪府高槻市〇町〇番〇〇号 義 務 者 大阪府豊中市〇町〇番〇〇号 添付書面 登記識別情報(又は登記済証)※⑤ 令和〇年〇月〇日申請 申請人兼代理人 課税価格 移転した持分の価格 登録免許税 金〇〇,〇〇〇円※⑬
不動産の表示※⑭ 所 在 高槻市〇町〇〇〇番〇〇 |
※①登記の目的は、夫の共有持分を移転しますので、「所有権移転」ではなく、「〇〇持分全部移転」となります。
※②日付は、財産分与の協議が協議離婚前に成立していた場合は「離婚届出日」、財産分与の協議が協議離婚後に成立した場合は「財産分与の協議が成立した日」となります。
※③財産分与を受けた者(権利者)が取得する共有持分を記載します。また所有者として、住所氏名は登記事項証明書に記載されますので、住民票の写し通り正確に記載しましょう。ただし、住所は都道府県名から記載し、2丁目を記載する場合は二丁目というように「~丁目」を記載する場合は固有名詞のため漢数字を使用するルールがあります。~丁目に続く〇番〇号は数字を使用します。都道府県名を省略できるのは都道府県名と市の名前が同一の場合です。マンション名についてはいれてもよいし、いれなくても大丈夫です。
(例)
〇 大阪府茨木市〇〇二丁目5番8号
〇 大阪市北区〇〇一丁目4番3号
✖ 茨木市〇〇二丁目5番8号
✖ 大阪府茨木市〇〇2丁目5番8号
✖ 大阪府茨木市〇〇二丁目五番八号
✖ 大阪府茨木市〇〇二丁目5ー8
※④財産分与を受けた者(権利者)と同様に贈与をした者(義務者)の住所氏名を印鑑証明書通り正確に記載します。現在の登記事項証明書の共有者(義務者)の住所と相違ないか確認しておきましょう。登記事項証明書の住所と印鑑証明書の住所が異なる場合は、所有権移転登記の前提として、所有権登記名義人住所変更登記をする必要があります。
※⑤登記識別情報または登記済証を添付します。
※⑥財産分与による〇〇持分全部移転を証する書面として登記原因証明情報を添付します。登記原因証明情報として、実務上、離婚協議書とは別個の書面を作成します。もちろん財産分与の内容が記載された離婚協議書を登記原因証明情報として使用することができます。
※⑦本件では、財産分与を受けた者(権利者)が、財産分与をした者(義務者)を代理して登記申請しているため、財産分与をした者(義務者)から登記申請をする財産分与を受けた者(権利者)への委任状が必要です。委任状に押印する印鑑は、財産分与をした者(義務者)の実印である必要があります。
※⑧財産分与をする者(義務者)の印鑑証明書(3ヶ月以内のもの)を添付します。
※⑨財産分与を受けた者(権利者)の住所を証する書面として住民票の写しまたは戸籍の附票の写しが必要です。
※⑩管轄は不動産の所在地によって決まっております。管轄の調べ方は、インターネットで茨木市の不動産であれば「茨木市、不動産管轄、法務局」、西宮市の不動産であれば、「西宮市、不動産管轄、法務局」のように「不動産が所在する市区町村名、不動産管轄、法務局」と入れて検索して頂ければ、法務局の不動産管轄のページに辿り着き確認することができます。
※⑪押印はお認印で結構です。書類に不備があった場合に法務局から連絡がきますので、連絡先を記載します。携帯電話の方がご都合よろしければそちらをご記載下さい。連絡がくるのはあくまで書類に不備があったときです。申請が完了しても連絡はきませんので、登記が完了する予定日を登記申請の際、確認するようにしておきましょう。
※⑫不動産の評価額から財産分与で移転する不動産の持分割合を掛け、1000円未満を切り捨てます。計算の結果、1000円に満たない場合は、1000円となります。
※⑬平成30年現在、土地の売買による所有権移転登記のような軽減措置はありません。土地・建物共通して、課税価格から1000分の20を掛け算出した金額から100円未満を切り捨てた金額が登録免許税となります。算出した金額が1000円に満たない場合は、1000円となります。
※⑭不動産登記事項証明書の記載に従い、不動産の表示を記載します。
登記申請書のWordファイルダウンロード
〇〇持分全部移転(財産分与・本人申請)のWordファイルダウンロード
〇〇持分全部移転(財産分与・代理人申請)のWordファイルダウンロード
不動産登記申請書のひな形一覧
★移転関係
▢ 敷地権付き区分建物の所有権移転登記(売買)
▢ 所有権一部移転登記(贈与)
▢ 〇〇持分全部移転登記(財産分与)
★名変関係
▢ 所有権登記名義人住所変更登記
▢ 所有権登記名義人住所変更登記(遺言執行者がする場合)
▢ 共有者の所有権登記名義人住所変更登記
▢ 共有者の所有権登記名義人住所氏名変更登記
▢ 共有者全員一括の所有権登記名義人住所変更登記
▢ 抵当権登記名義人住所変更登記
★抹消関係
▢ 抵当権抹消登記
▢ 抵当権抹消登記(共有者の一人から申請)
▢ 抵当権(あ)(い)抹消登記
▢ 古い抹消書類を使用する抵当権抹消登記
★設定関係
▢ 抵当権設定登記
★その他
▢ 所有権保存登記(建物表題部所有者名義)
▢ 抵当権変更登記(債務者の住所変更)
▢ 抵当権変更登記(免責的債務引受)