相続放棄する前に相続人が亡くなってしまったら、相続放棄できなくなる?

相続放棄するためには、自分に相続があることを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てをしなければなりませんが、この3ヶ月の熟慮期間中に相続人が亡くなってしまったら、相続放棄することはできなくなってしまうのでしょうか?

次の例を考えてみましょう。

祖父が平成30年2月4日に亡くなったとします。祖父には1000万の借金があり、プラス財産は特段ありませんでしたので、相続人である父は相続放棄する準備をしておりました。しかし、父が相続放棄の申立てをする前の平成30年4月4日に急死してしまいました。私は父の唯一の相続人である子です。父には自宅である土地建物のプラス財産があり、父の財産については相続したいと考えております。

このような場合、祖父の相続放棄を行い、父の財産についてのみ相続することができるんでしょうか?

 

再転相続関係図

結論を申し上げると、父の相続人である子は祖父の相続放棄のみすることができます。

この場合の子を再転相続人、祖父を被再転相続人といいます。

子は、祖父の相続と父の相続とに分けて相続放棄するかどうか選ぶことができます。

但し、父の相続放棄をすると自動的に祖父の相続放棄もしたこととなります。

祖父を相続するかどうかの権利はあくまで父を相続したときに引き継がれるものですので、父の相続放棄をすると当然に祖父を相続する権利を引き継ぐことができなくなるからです。

 

したがって、3ヶ月の熟慮期間に子の取りうる相続放棄手続きをまとめると以下のとおりとなります。

1.祖父の相続放棄、父の相続をしたい場合。

祖父の相続放棄手続きをすればよい。

2.祖父の相続放棄、父の相続放棄をしたい場合。

父の相続放棄手続きをすればよい。

→自動的に祖父の相続放棄となる。

(例外)先に祖父の相続放棄手続きを行ってしまった場合は、父の相続放棄手続きも併せて行うことになる。

→当初は祖父の相続放棄をして父の財産は相続するつもりだったが、3ヶ月熟慮期間終了間際に父に大きな借金が見つかり急遽父の相続放棄もするようなケースでは、結果的に、祖父及び父のそれぞれ相続放棄手続きをすることになる。

3.祖父の相続、父の相続をしたい場合。

なにも手続きをする必要はない。

4.祖父の相続、父の相続放棄をしたい場合。

父の相続放棄をすると自動的に祖父の相続放棄もしたこととなるため、祖父の相続をすることはできません。したがって、取りうる手続きはありません。

 

祖父の相続につき相続放棄の熟慮期間の起算点はいつになる?

相続放棄するためには、自分に相続があることを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てをしなければなりません。祖父の相続につきいつ自分に相続があることを知ったのか?3ヶ月の熟慮期間の起算点が問題になりますが、

これについては、祖父の死亡を知ったときではなく、父の死亡を知ったときとなります。

すなわち、祖父の相続についても父の相続についても、父の死亡日である平成30年4月4日を起算点として3ヶ月以内に相続放棄するかどうか判断すればよいこととなります。

 

再転相続の熟慮期間

 

祖父の相続放棄の管轄裁判所は?

祖父の相続放棄については、「(祖父)再転相続人(子)」として家庭裁判所に相続放棄の申立てを行うことになります。この場合の管轄裁判所は祖父が亡くなったときの住所地であり、父の亡くなったときの住所地ではありません。

父の相続放棄についての管轄裁判所は、父の亡くなったときの住所地となります。