所有権保存登記をする前に、表題部所有者が亡くなってしまった場合
建物を建築した場合には、
建物の物理的状況を表示するために、
新築後1か月以内に建物の表題登記をしなければなりません。
この表題登記には所有者の住所と氏名が記載されているものの
所有権であることを第三者へ主張することはできません。
したがって、
建物の所有権を第三者に主張し、
銀行から融資を受けるための抵当権設定登記や
建物を売却するための所有権移転登記を
するためには、
建物の保存登記をしておく必要があるため、
表題登記をした後すぐに保存登記をするのが一般的です。
しかし、保存登記には表題登記と異なり、
登記する義務はありませんので、
保存登記がなされずにそのままになっているケースもあります。
そのようなケースにおいて、
すでに表題部の所有者が亡くなってしまった場合には、
その相続人が直接、相続人名義で保存登記を行うことができます。
もちろん被相続人名義で保存登記することもできますが、
被相続人名義で保存登記をしても、
その後相続による所有権移転登記をしますので、
登録免許税を節約するために、
はじめから相続人名義で保存登記をしたほうがよいでしょう。
不動産登記法第74条(所有権の保存の登記)
所有権の保存の登記は、次に掲げる者以外の者は、申請することができない。
一 表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人
(以下、省略)
被相続人名義での保存登記をしなければならないケース
被相続人が保存登記をする前に建物を売却した場合、
相続人名義で保存登記をすることはできません。
被相続人が亡くなる前に既に建物を売却しているため、
当該建物は相続財産ではないからです。
一旦被相続人名義に保存登記をしてから、
買主名義に所有権移転登記をすることになります。
この場合、区分建物を除き、
直接買主名義に保存登記することはできません。
表題部の登記だけでは、
権利の移転登記はできないからです。
相続人がする所有権保存登記の手続き
所有権保存登記に必要になる添付書類は、
通常の相続による所有権移転登記と同様です。
被相続人が亡くなったこと及び相続人が誰であるか証明するかを証明するため、
戸籍(除籍または改製原戸籍)謄本などが必要となります。
遺産分割協議により特定の相続人が建物を相続することになった場合は、
遺産分割協議書を添付します。
この場合、直接、特定の相続人名義とすることができます。
相続による保存登記と、
相続による所有権移転登記で異なるのは、
数次相続が起こった場合です。
数次相続とは、
相続登記をする前にさらに相続が発生した場合のことをいいます。
所有権移転登記の場合は、
中間の相続が単独であることが必要ですが、
保存登記の場合は、
中間の相続が単独でなくても、
最終の相続人に直接保存登記をすることができます。
つまり下記相続関係図において、
遺産分割協議書を添付することなく、
赤色で囲った最終の相続人に直接保存登記ができるということです。