同一人物なのに共有者名義になってしまうケースとは?

次の登記簿(登記事項証明書)をご覧ください。


同一人物の共有者の登記簿(登記事項証明書)

本件は、夫婦共有名義の不動産において

①夫が死亡し相続が発生、

②夫持分を妻に相続させることによって、

③妻単独名義

となった、ケースです。

本来であれば、夫の死亡の相続登記のときに、従前の妻の共有持分を取得したときの住所を、相続で新しく取得する持分の住所に変更するべきでしたが、それをしなかったために、同一人物であるにもかかわらず、順位番号2で肩書が「共有者」登記されています。

相続登記のときに、住所変更登記をして住所を一致させていた場合は、

次の登記簿(登記事項証明書)のとおりとなります。


共有持分を取得して所有者となった登記事項証明書

順位番号2で肩書が「所有者」で登記されていることがわかります。

 

>>共有持分の相続登記と住所変更登記を一緒にすべき場合の手続き

 

 

同一人物なのに共有名義の相続登記における登記の目的は?

通常、共有者の持分全部を移転する相続登記の登記の目的は「共有者全員持分全部移転登記」となります。

しかし、今回は実質上同一人物です。

「所有権移転」とすべきか、

「共有者全員持分全部移転」とすべきか、

少し悩みました。

コンピューター処理する関係上、

実質よりも形式的な処理を優先するかなと考えると、

「共有者全員持分全部移転」かもしれません。

他にも相続する不動産(共有持分でない分含む。)があったので、

すべてを一括申請するには

「共有者全員持分全部移転及び所有権移転」として申請すべきかなと考えたのですが、

念のために申請する法務局に確認しました。

「所有権移転」で問題ないとの回答でした。

みごとに予想がはずれましたね。

 

 

同一人物なのに共有名義となってしまった不動産の相続登記におけるデメリット

相続登記の場合は、

被相続人の「登記簿(登記事項証明書)上の住所」と「最後の住所」が異なっていても、

住所変更登記を省略することができます。

しかし、被相続人の「登記簿(登記事項証明書)上の住所」から「最後の住所」までの住所の異動をすべて証明する必要があります。これは被相続人の同一性担保(登記簿上の人物がまぎれもなく被相続人であることの証明)のためです。登記済証を提供することによって、これに代えることができます。ただし、登記済証がなく住所のつながりも証明できないと上申書(印鑑証明書付)などが必要となり手続きが煩雑になりますので要注意です。

いずれにしても、本件のように不動産共有持分の相続登記するときに住所が変更しているならば、住所変更登記は必ず入れるべきといえるでしょう。今回は住所に着目しましたが、氏名が変更している場合も同様です。