相続放棄手続きを自分でする方法
まずは相続放棄の全体の流れを確認しましょう。
本記事では、「自己のために相続が発生したことを知ったとき」から3か月以内の場合を想定しております。被相続人死亡後3か月経過後の相続放棄については専門家にご相談されることをオススメします。
相続放棄手続きの流れ
1.家庭裁判所に相続放棄申述書等を提出 ↓ 約10日後 2.裁判所からご本人様宛に「照会書」及び「回答書」が送付される ↓ 数日後 3.回答書に必要事項を記入し、裁判所に返送する。 ↓ 約10日後 4.裁判所から相続放棄申述受理通知書が送付される ↓ 5.裁判所において相続放棄申述受理証明書の取得が可能となる。
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大阪家庭裁判所では、上記2、3の「照会書」及び「回答書」の送付はされないことも多く、相続放棄申述書等を提出し、書類に不足があれば裁判所から連絡がありますが、特段問題がなければ連絡もなく10日ほど経過すれば、裁判所から相続放棄申述受理通知書が送付され事件が終了します。
それでは、上記時系列1~5に沿って詳しくみていきましょう。
1.家庭裁判所に相続放棄申述書等を提出
「相続放棄をするためには、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、①必要書類を準備し、②相続放棄申述書に、③印紙等を添えて④被相続人の最後の住所地を管轄する裁判所に提出しなければなりません。」
①必要書類を準備する
→例えば、相続人が成人した子供で故人が父のケースであれば
□ 父親が亡くなったことがわかる戸籍(除籍又は改製原戸籍)謄本
□ 父親の最後の住所がわかる除票または戸籍の附票
□ 相続放棄する子供の戸籍謄本
となります。
必要書類は相続人となる者が配偶者、孫、両親、兄弟、甥姪、未成年の子である場合でそれぞれ異なります。成人した子供が相続人の場合は上記のとおりとてもシンプルですが、相続人が子ではなく兄弟の場合には、先順位の相続人である両親や子がいないことを証明しないといけないため、両親の死亡がわかる戸籍等や故人の出生から死亡するまでつながる戸籍等が必要になります。また故人が死亡してから3か月以上が経過してしまっている場合は、必要書類として事情説明書等が必要となります。その他事情によって追加書類が必要となるケースもあります。
②相続放棄申述書を作成する
前記①必要書類を集めることができましたら、いよいよ相続放棄申述書を作成します。
下記相続放棄申述書は裁判所のホームページからダウンロードすることができます。
※相続放棄申述書を作成するためのポイント
「①必要書類を準備する」で集めた書類が手元にあればほとんど書ける内容だと思います。特に難しいことはありません。
署名欄に押印する印鑑はお認印で大丈夫ですが、後の手続きで回答書を記載する際に同じ印鑑を押印することになりますので、統一したものを用意しましょう。
記入を間違えたときは、訂正したい箇所の上に二重線をひきその上に訂正印を押印しましょう。空いたスペースに正しく記入すれば大丈夫です。
「相続放棄申述書」は2枚になりますが、ページ番号が振っていれば割印は必要ないという裁判所の取り扱いに従い、割印は必要ありません。
職業欄は会社員、自営業、アルバイト、無職等の書き方で大丈夫です。
相続放棄の理由が、相続の争いにまきこまれたくない場合は、6その他に「かかわりたくない」等その旨簡潔に記載します。
③印紙等を用意する
「相続放棄申述書」に記載されている箇所に800円の収入印紙を貼ります。
相続放棄手続きで裁判所と郵送でやり取りしますので、その分の郵便切手を予め納めなくてはいけません。これは裁判所によって異なりますので申請する裁判所に事前に確認しましょう。
大阪家庭裁判所は84円が5枚、10円が5枚となります。(令和3年4月1日現在)
切手は郵便局でもらう小さな袋にまとめて出すとよいでしょう。
④裁判所に提出する
これまでに用意した①から③までの書類等をまとめて、郵送または持参にて管轄裁判所に提出致します。
<提出書類のイメージ>
提出先の管轄裁判所は、申述する本人の住所地を基準とするのではなく、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所となります。従って、遠方になることも多くありますが郵送で提出すれば問題ありません。大阪府内における市区町村の管轄裁判所は以下のとおりとなります。
管轄区域 | |
大阪家庭裁判所 | 大阪市 池田市 箕面市 豊能郡 豊中市 吹田市 茨木市 高槻市 三島郡 東大阪市 八尾市 枚方市 守口市 寝屋川市 大東市 門真市 四條畷市 交野市 摂津市 |
大阪家庭裁判所堺支部 | 堺市 高石市 大阪狭山市 富田林市 河内長野市 南河内郡 羽曳野市 松原市 柏原市 藤井寺市 |
大阪家庭裁判所岸和田支部 | 岸和田市 泉大津市 貝塚市 和泉市 泉北郡 泉佐野市 泉南市 阪南市 泉南郡 |
その他全国各地の管轄裁判所は以下にて簡単に調べることができます。
2.裁判所からご本人様宛に「照会書」及び「回答書」が送付される
相続放棄申述書提出後、通常は約10日後に「照会書」及び「回答書」が送付されてきます。相続関係が複雑になればなるほど、送付は遅れるようです。
「照会書」及び「回答書」が送付される趣旨は、ご本人様に「相続放棄する」旨の意思確認ですので、相続放棄申述書に記載したご本人様住所に送付されます。放置することがないように、しっかり確認するように致しましょう。
なお「照会書」及び「回答書」は必ず送付されるわけではありません。裁判所の判断で相続放棄の申述がそのまま受理されることもあります。
3.回答書に必要事項を記入し、裁判所に返送する。
回答書のサンプルは以下のとおりです。裁判所により内容は異なりますのでご注意ください。
回 答 書 照会事項につき次のとおり回答します。 住所 氏名 (自分で署名し、申述書又は委任状に押印した印鑑を押してください。) ①あなたは、被相続人とどういう関係にありますか。 (答え) 被相続人の ②あなたは、被相続人の死亡をいつ知りましたか。 (答え) 平成・令和 年 月 日 ③あなたは、被相続人の死亡により、相続をできるということをいつ知りましたか。 (答え) 平成・令和 年 月 日 (注意)普通は、②の年月日と同じになりますが、相続権のあることを知らなかった場合や第2順位以降の場合は、②の日以降、人から聞いたりして知った日になります。 ④あなたから、相続放棄の申述がなされていますが、それは次のいずれですか。 (答え) 1 自分自身でした 2 だれかに頼んだ 3 だれかが勝手に書いた (注意)2を〇で囲んだときは、頼んだ人の住所、氏名を書いてください。
⓹あなたが相続放棄の申述をしたのは、あなたの本心からしたことですか。 (答え) 1 本心です 2 本心ではありません(理由 ) ⓺相続放棄の理由は、次のいずれですか。 (答え) 1 債務超過のため 2 被相続人から生前贈与を受けているから 3 生活が安定しているから 4 遺産が少ないから 5 現在結婚し又は養子縁組しているから 6 遺産を分散させたくないから 7 その他( )
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4.裁判所から相続放棄申述受理書が送付される
裁判所によって、相続放棄申述受理書の様式は多少異なりますが、概ね下記のような書面が送付されます。
〒〇〇〇-〇〇〇〇
住所 〇〇〇〇 氏名 〇〇〇〇 様 通 知 書 事件番号 〇〇家庭裁判所 平成〇〇年(家)第〇〇〇〇〇号 事 件 名 相続放棄申述事件 申 述 人 〇〇〇〇 被相続人 〇〇〇〇 平成〇〇年〇月〇〇日申述人の被相続人に対する相続放棄の申述を受理したので通知します。 この通知書は大切に保管して下さい。被相続人の債権者から借金等の返済を求められた場合は、本書を提示して下さい。現在、被相続人の債権者から返済の請求を受けている場合は、相続放棄の申述が受理されたことを連絡して下さい。裁判所から債権者等に連絡することはありません。 また、あなたの他の相続人や、あなたが相続を放棄したことによって新たに相続人になった人がいれば、あなたの相続放棄申述が受理されたことを連絡してあげるのが親切です。相続放棄の申述は、相続の開始を知った日から3ヶ月以内にする必要があります。 なお、手続費用(これまでに本手続のために支払った印紙代や切手代等)は申述人の負担とされました(新たに何らかの費用負担を求めるものではありません)。 本件につき予納を受けた郵便切手の使用残額を返還します。 〇〇家庭裁判所 裁判所書記官 〇〇〇〇 印 |
5.裁判所において相続放棄申述受理証明書の取得が可能となる
不動産登記申請や預金口座の名義変更などで必要な場合は、相続放棄申述受理証明書を取得しましょう。特に必要ない場合は、取得する必要はありません。
それではまず裁判所のホームページにおいて、申請書(PDF)をダウンロードしましょう。
裁判所HP http://www.courts.go.jp/osaka/saiban/l3/Vcms3_00000414.html
申請書に必要事項を記入します。
注意すべき点は、事件番号については事前に調べる必要があります。取得済の相続放棄申述受理通知書に記載されておりますので確認しましょう。
上から順に記入していきましょう。郵送で請求する際には、請書欄にも忘れず署名捺印するようにします。正確に言えば記入時にはまだ受領しておりませんが、事前に記入して提出するのが通例です。日付欄は空欄でかまいません。
記入が終わりましたら、相続放棄申述書を提出した裁判所に郵送もしくは持参にて申請します。
郵送先は、相続放棄受理通知書記載の裁判所係宛となります。
郵便封筒宛名の空いたスペースに事件番号を記載しておくと親切です。
相続放棄申述した本人が郵送申請する場合に用意するもの
1.証明書1通につき、収入印紙150円(申請書に貼付。)
2.返送用の封筒(宛名を書いたもの。)
3.返送用の郵便切手(証明書が5通以上の場合は94円分、4通以下なら84円分)
4.申請者(申述人)の身分証明書(運転免許証、健康保険証等)のコピー
裁判所書類作成のひな形一覧
▢ 相続放棄手続き
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