遺言執行者選任の申立てが必要な場合とは?

遺言書で「遺言執行者が指定されていない場合」や、「遺言執行者が指定されているがその方が既に亡くなっている場合、あるいは遺言執行者が就任を辞退した場合」等では、遺言執行者選任の申立てをすることによって新たに遺言執行者を選任することができます。遺産を受け取る方が相続人で遺産が不動産や預貯金のみであるなら遺言執行者をわざわざ選任しなくても相続人が単独で手続きができることも多いです。
それでは、どういった場合に遺言執行者が必要となるのでしょうか?

当事務所でもっともご依頼が多いのが、不動産を相続人以外の方へ遺贈する場合です。この場合では、不動産の名義変更に相続人全員の協力が必要となってきます。具体的には、相続人に不動産の権利証を探してもらい、必要書類への署名捺印に加え、相続人全員の印鑑証明書が必要となります。本来であれば受け取るはずの遺産を遺贈する立場の相続人が好意的に手続きに協力するはずもないので、早々に遺言執行者を選任してしまったほうが無難ともいえるでしょう。
そのほか、1.認知、2.推定相続人の廃除または廃除の取消し、3.一般財団法人の設立行為、の場合では遺言執行者の選任が必要不可欠となってきます。

どのような場合に遺言執行者の選任をするべきかについては、司法書士へご相談されることをオススメします。
 

遺言執行者選任手続き全体の流れ

 
遺言執行者選任手続きの流れ

 

1.家庭裁判所に遺言執行者選任の申立書を提出

↓ 約2週間

2.裁判所から申立人及び遺言執行者候補者宛に「照会書」が送付される

↓ すみやかに

3.照会書に必要事項を記入し、裁判所に返送する。

↓ 約2週間

4.裁判所から「遺言執行者選任審判書謄本」が申立人及び遺言執行者に送付される。

 

※日数に関してはめやすです。事案によっては「照会書」が発送されるまでに1か月以上時間を要したこともあります。

 
 

それでは、上記時系列1~4に沿って詳しくみていきましょう。

1.家庭裁判所に遺言執行者選任の申立書を提出

①申立てをする人をまずチェック

申立てできる人は、利害関係人(遺贈を受ける人、相続人、遺言者の債権者など)である必要があります。

②必要書類を準備する

▢ 遺言者が死亡したことがわかる戸籍(除籍又は改製原戸籍)謄本
申立先の家庭裁判所に遺言書の検認事件の事件記録が保存されている場合(検認から5年間保存)は添付不要)

▢ 遺言執行者候補者の住民票または戸籍の附票

▢ 遺言書写し又は遺言書の検認調書謄本の写し
申立先の家庭裁判所に遺言書の検認事件の事件記録が保存されている場合(検認から5年間保存)は添付不要)

▢ 利害関係を証する資料
受遺者の場合は遺言書写しからわかるなら不要、親族の場合には戸籍謄本など
 
★遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所が申立先になるのですが、遺言者の最後の住所地がわかる除票または戸籍の附票は添付書類になっておりません。
★上記必要書類のほか事案によって追加書類が必要となるケースがあります。
たとえば、
遺言書で指定された遺言執行者が既に亡くなっている場合では、
▢ 遺言執行者が死亡したことがわかる戸籍(除籍又は改製原戸籍)謄本

遺言書で指定された遺言執行者が就任を辞退した場合には、
▢ 遺言執行者が就任を辞退したことがわかる通知書など

③遺言執行者選任の申立書を作成する

前記②必要書類を集めることができたら、いよいよ遺言執行者選任の申立書を作成します。申立書は裁判所のホームページからダウンロードすることができます。

裁判所のホームページ

遺言執行者選任申立書 
遺言執行者選任申立書2

<記 入 例>
遺言執行者選任申立書サンプル1
遺言執行者選任申立書サンプル2

※遺言執行者選任の申立書を作成するためのポイント

「①必要書類を準備する」で集めた書類が手元にあればほとんど書ける内容だと思います。特に難しいことはありません。

署名欄に押印する印鑑はお認印で大丈夫ですが、後の手続きで照会書を記載する際に同じ印鑑を押印することになりますので、統一したものを用意しましょう。

記入を間違えたときは、訂正したい箇所の上に二重線をひきその上に訂正印を押印しましょう。空いたスペースに正しく記入すれば大丈夫です。

「遺言執行者選任の申立書」は2枚になりますが、ページ番号が振っていれば割印は必要ないという裁判所の取り扱いに従い、割印は必要ありません。

職業欄は会社員、自営業、アルバイト、無職等の書き方で大丈夫です。どうしてもわからない場合は不明も許されるでしょう。

 

 

④印紙・郵便切手を用意する

「遺言執行者選任の申立書」に記載されている箇所に800円の収入印紙を貼ります。

遺言執行者選任手続きで裁判所と郵送でやり取りしますので、その分の郵便切手を予め納めなくてはいけません。これは裁判所によって異なりますので申請する裁判所に事前に確認しましょう。

大阪家庭裁判所は500円が2枚、84円が10枚、50円が2枚、10円が5枚、2円が6枚となります。(令和3年4月1日現在)

切手は郵便局でもらう小さな袋にまとめて出すとよいでしょう。

 

⑤裁判所に提出する

これまでに用意した②から④までの書類等をまとめて、郵送または持参にて管轄裁判所に提出致します。

<提出書類のイメージ>

申請書の綴じ方(遺言執行者選任)

提出先の管轄裁判所は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所となります。従って、遠方になることも多くありますが郵送で提出すれば問題ありません。大阪府内における市区町村の管轄裁判所は以下のとおりとなります。

 

管轄区域
大阪家庭裁判所 大阪市 池田市 箕面市 豊能郡 豊中市 吹田市 茨木市 高槻市 三島郡 東大阪市 八尾市 枚方市 守口市 寝屋川市 大東市 門真市 四條畷市 交野市  摂津市
大阪家庭裁判所堺支部 堺市 高石市 大阪狭山市 富田林市 河内長野市 南河内郡 羽曳野市 松原市 柏原市 藤井寺市
大阪家庭裁判所岸和田支部 岸和田市 泉大津市 貝塚市 和泉市 泉北郡 泉佐野市 泉南市 阪南市 泉南郡

 

その他全国各地の管轄裁判所は以下にて簡単に調べることができます。

裁判所の管轄区域

 

2.裁判所から申立人及び遺言執行者候補者宛に「照会書」が送付される

「照会書」が送付されるのは、
▢ 申立人
▢ 遺言執行者候補者
両名ですが、申立人と遺言執行者候補者が同一人物の場合は送付されるのは1回だけです。

 

3.照会書に必要事項を記入し、裁判所に返送する。

照会書のサンプルは以下のとおりです。
裁判所により内容は異なりますのでご注意ください。

照  会  書

 
▢ 照会事項(それぞれの余白に回答を記入してください。)
① 遺言者〇〇〇〇さんから見て、あなたはどのような関係(続柄など)になりますか。

② 現在、遺言者は誰が保管していますか。
 
③ 今回、遺言執行者選任の申立てをした理由は何ですか。
 
④ 遺言者〇〇〇〇さんの遺産として、どのようなものがありますか。
 
⑤ あなたは、下記のいずれかの事項に該当しますか。
 ア 10年以内に破産開始決定を受けたことがある。
 イ 詐欺破産罪で有罪判決を受けたことがある。
 ▢ いずれにも該当しない。
 
⑥ あなたが本件の遺言執行者として適任である理由を詳しく書いてください。
 
⑦ その他参考になると思われる事項があれば書いてください。
 
回答年月日 令和  年  月  日
 
記入者住所
 
記入者署名押印                     
 
連絡先の電話番号

 

 

4.裁判所から遺言執行者選任審判書謄本が申立人及び遺言執行者にそれぞれ送付され手続きが終了する

遺言執行者選任審判書謄本「遺言執行者の資格を証する書面」となりますので大切に保管するようにしましょう。
 
 

裁判所書類作成のひな形一覧

▢ 相続放棄手続き
▢ 遺言執行者選任申立て手続き