給与差押えをされる範囲

給与差押えは、その全額が差押えされるわけではありません。

具体的な給与差押えの範囲は、

給与から税金・社会保険料などを控除した残額の4分の1までが差押えの対象となります。

ただし、給与から税金・社会保険料などを控除した残額が44万円を超える場合は、

その残額から33万円を差し引いた金額が差押えの対象となります。

 

例1 給与から税金・社会保険料などを控除した残額が32万円のケース

32万円ー32万円×4分の1=24万円(実際に受け取る給与)

例2 給与から税金・社会保険料などを控除した残額が50万円のケース

50万円ー(50万円ー33万円)=33万円(実際に受け取る給与)

 

毎月の控除後の給与が44万円を超える例2のケースはそんなに多くはないと思いますが、

賞与についても上記と同じ規定が適用されるため注意

つまり賞与から税金・社会保険料などを控除した残額が44万円を超える場合は、

その残額から33万円を差し引いた金額が差押えの対象となります。

44万円を超えない場合は毎月の給与と同じように4分の1が差押えの対象となります。

 

例3 賞与から税金・社会保険料などを控除した残額が40万円のケース

40万円ー40万円×4分の1=30万円(実際に受け取る賞与)

例4 賞与から税金・社会保険料などを控除した残額が60万円のケース

60万円ー(60万円ー33万円)=33万円(実際に受け取る賞与)

 

給与差押えを止めるには?

自己破産手続きの申立てをすることによって、給与差押えを止めることができます。

その方法は自己破産手続きが管財事件になる場合と同時廃止事件になる場合で異なります。

1.管財事件の場合

破産手続き開始とともに、給与差押えの効力を失いますので、給与の全額を受け取ることができます。

2.同時廃止事件の場合

破産手続き開始後、免責許可決定が確定するまでは給与差押えが中止されます。あくまで中止ですので、免責許可決定が確定するまでの間、差押えられた給与は受け取ることができません。免責許可決定の確定後、給与差押えが中止されていたあいだの差押給与分も含めて給与を受け取ることができます。

同時廃止事件の場合の具体的な手続きの流れ

個人の自己破産手続きだと同時廃止事件になる場合がほとんどです。

それでは一般的な自己破産手続き(同時廃止事件)を基に給与差押えをストップさせるためにいかなる手続きが必要になるか見てみましょう。

以下の青色部分が必要になる手続きです。

一般的な自己破産手続き(同時廃止事件)の流れ

1.自己破産申立て

↓ 約2週間

2.審尋期日

↓ 数日

3.破産手続開始決定・破産手続廃止決定

強制執行手続き中止の上申書提出(提出先:執行裁判所)

↓ 約2か月

4.免責許可決定

免責許可決定確定証明申請書提出(提出先:破産申立裁判所)

↓ 約1か月

5.免責許可決定の確定

強制執行取消の上申書提出(提出先:執行裁判所)

上記は、大阪地方裁判所、京都地方裁判所の破産手続きの基準を基に作成してます。全国各地の裁判所によって、大きく異なることがありますのでご注意ください。

フローチャート記載のとおり、自己破産申立てから実際に差押え給与が受け取ることができる免責許可決定の確定まで約3か月から約4か月ほどの時間がかかります。申立てにかかる書類が充分でなかったりする場合には裁判所から追加書類の提出を求められますのでさらに時間を要します。

強制執行手続き中止の上申書

破産手続開始決定正本が裁判所から送達されましたら、執行裁判所に強制執行手続き中止の上申書を提出しましょう。添付書類として破産手続開始決定書のコピーをつけて、原本は還付して頂きます。郵便切手が必要かどうかも裁判所に確認しましょう。

上申書を提出した後に裁判所から勤務先に強制執行手続きが中止された旨の書面を送付してくれますが、給料日が直近にせまっている場合には、誤って債権者へ支払いをしてしまわないために、勤務先への連絡はいつごろになるのか裁判所にしっかり確認するようにしましょう。必要であれば、裁判所から勤務先へ電話連絡してくれることもあります。

平成〇〇年(ル)第〇〇号 債権差押命令申立事件

債権者 〇〇〇

債務者 〇〇〇

第三債務者 〇〇〇

強制執行手続中止の上申書

                               平成〇〇年〇月〇日

〇〇地方裁判所第〇民事部 御中

債務者 〇〇 〇〇 印

上記当事者間の御庁頭書事件につき、債務者は、御庁より、平成〇〇年〇月〇日破産法第216条第1項の規定に基づき破産手続開始決定と同時に破産手続廃止の決定を受けました。(平成〇〇年(フ)第〇〇〇号)。

標記事件は、上記破産手続きにおける破産債権に基づく強制執行であるので、上記破産手続きにおいて、破産者に対する免責許可についての裁判が確定するまでの間、標記事件を中止されたく上申いたします。

添 付 書 類

1.破産手続開始決定正本(写し) 1通

 

強制執行取消の上申書

免責許可決定正本が裁判所から送達されましたら、破産申立裁判所に前もって、免責許可決定確定証明申請書を提出しておきます。申請書は受領書分も含め下記のとおり2通提出します。

実際に免責許可が確定しましたら裁判所から免責許可確定証明書が送達されますので、強制執行取消の上申書及び免責許可決定正本とともに執行裁判所に提出します。免責許可決定正本は写しを添付書類として提出し、原本は還付してもらうようにしましょう。

上申書を提出した後に裁判所から第三債務者である勤務先に強制執行が取り消された旨の書面が送達されます。

この結果、強制執行が中止されていた期間の給与も全て受け取ることができるようになります。勤務先にもよりますが、強制執行が中止されていた期間の給与の支払いに時間がかかるケースもありますのでご注意下さい。

勤務先が差押え給与部分について供託している場合には、別途手続きが必要となります。

事件番号 平成〇〇年(フ)第〇〇〇号

破産者名 〇〇 〇〇

免責許可決定確定証明申請書

〇〇地方裁判所第〇民事部 御中

平成〇〇年〇月〇日

申請人 〇〇 〇〇 印

上記破産者に対して、平成〇〇年〇月〇日にされた免責許可の決定は、平成〇〇年〇月〇日に確定したことを証明してください。

 

上記証明書1通を受領しました。

       平成〇〇年〇月〇日

申請人  〇〇 〇〇 印

事件番号 平成〇〇年(フ)第〇〇〇号

破産者名 〇〇 〇〇

免責許可決定確定証明申請書

〇〇地方裁判所第〇民事部 御中

平成〇〇年〇月〇日

申請人 〇〇 〇〇 印

上記破産者に対して、平成〇〇年〇月〇日にされた免責許可の決定は、平成〇〇年〇月〇日に確定したことを証明してください。

 

上記証明する。

       平成〇〇年〇月〇日

〇〇〇地方裁判所第〇民事部

裁判所書記官

 

平成〇〇年(ル)第〇〇号 債権差押命令申立事件

債権者 〇〇〇

債務者 〇〇〇

第三債務者 〇〇〇

強制執行取消の上申書

                               平成〇〇年〇月〇日

〇〇地方裁判所第〇民事部 御中

債務者 〇〇 〇〇 印

上記当事者間の御庁頭書事件につき、債務者が申し立てた破産手続開始申立事件(〇〇地方裁判所平成〇〇年(フ)第〇〇〇号)において、免責許可決定が確定したので、上記差押命令を取り消されたく上申いたします。

添 付 書 類

1.免責許可決定正本(写し)  1通

2.免責許可決定確定証明書   1通