まずは相続手続きの全体像を確認!

大切な方が亡くなったのですから、大半の方が冷静に手続きを進めていけるような状態ではないと思います。そのような状況であっても、限られた時間のうちに、やらなければならない大切なことがたくさんあります。相続は故人を想いやり、家族寄り添って乗り越える大切な時間です。決して争いを生じさせたり、家族関係を悪化させる機会にしてはなりません。

私ども専門家が、みなさまが心にゆとりをもって相続に向き合えるように、少しでもお力になれたら嬉しく思います。

相続開始後にやるべきことは大きく分けると次の3つに分かれます。

1.葬儀・法要・納骨

葬儀社の決定、お墓選びからお世話になった方々へのあいさつまわり、初七日、四十九日など法要など

2.法的な相続手続き

遺産分割協議、相続放棄、相続税の申告、不動産の名義変更など

3.各種変更手続き

光熱費の引き落とし口座の変更解約、健康保険介護保険の資格喪失手続きなど

 

森橋司法書士から一言!

相続手続きは多岐に渡る上に期限があるものが多く大変です。まず最初にやるべきことの全体像に目を通すことが大事です。目次欄「どの専門家に何を相談したらいいの?」で各相続手続きをチェックして頂いてから、ご自身に該当する箇所を確認していきましょう。そもそも相続するかどうかの判断「相続放棄」の手続きは3か月という期限がありますので特に大事です。

どの専門家に何を相談したらいいの?司法書士がお手伝いできることが大半です。

それでは、相続開始後やらなければならないことを一つずつ見ていきましょう。

自分でした方がよいもの、専門家に任せてしまった方がいいもの、またどの専門家に任せるべきか一つの指針として参考にして下さい。期限についてはあくまで推奨です。事情によって異なりますので、こちらも一つの指針として参考にしてください。ご自身でできる手続きでもご不明な点等ありましたら、どうぞお気軽にお問合せ下さい。

1.死亡届及び死亡診断書並びに火葬許可申請書の提出

→ 期限7日以内 ご自身でできる手続き

死亡診断書は、死亡に立ち会った医師に作成してもらいます。死亡診断書は生命保険の受取の際も必要になることもありますが、もし必要になるなら再度取り寄せることができますのでとりあえずは1枚だけで大丈夫です。死亡届及び死亡診断書は、市区町村役場に提出します。同時に火葬許可申請書を提出すると火葬許可証がもらえます。

2.通夜・葬儀・初七日

→ 任せるべき専門家は葬儀社

病院から紹介された葬儀社を選ぶのではなく、故人が生きている間に、葬儀社は選んでおくことが望ましいです。初七日については、最近では、葬儀と同じ日に行う場合がほとんどです。

3.健康保険及び介護保険の資格喪失届並びに年金受給の停止

→ 期限14日以内 ご自身でできる手続き

故人が会社で健康保険に加入していた場合には、会社が手続きを行いますので、会社に健康保険被保険証だけ返却するようにしましょう。この場合の期限は5日となります。

国民健康保険被保険証または後期高齢医療被保険証の返却先は市区町村役場となります。この場合の期限は14日となります。

健康保険証を返却する時に一緒に、葬祭費または埋葬料の申請手続きをしておくとよいでしょう。申請期限は葬儀の日から2年です。

→葬祭費または埋葬料の受給手続きの詳細

年金受給停止については、年金事務所又は年金相談センターに年金受給権者死亡届を提出します。厚生年金については期限は10日、国民年金については14日以内です。

年金は死亡した月まで受給できますので、通常は未支給分が発生します。なぜなら、年金は2か月分をまとめて後払いするからです。年金受給の停止だけじゃなく未支給年金の請求を忘れずにしましょう。年金受給の停止をすれば自動的に未支給分が支払われる仕組みではないので注意。

年金未支給分の請求手続きの詳細

4.各種契約(光熱費、通信費等)の変更又は解約

→ 期限銀行口座を凍結するまで ご自身でできる手続き

故人が生前契約されており、銀行から引き落としで支払いをされているものを中心に各種契約の変更又は解約を確認していきます。故人がなくなったことを各金融機関について伝えると銀行口座は凍結され、以後入出金ができなくなります。従って、凍結される前に、電気水道ガスといった光熱費から携帯電話固定電話インターネットといった通信費について、今後も使用する必要がある場合は変更手続き、必要ないものについては解約手続きを行います。銀行口座をチェックすることによって、クレジットカードの支払いが残っているかどうかも確認しましょう。

5.四十九日及び納骨式

→ 期限49日 任せるべき専門家はお寺、石材店等

6.遺言書を探す

→ 相続開始後すぐに ご自身でできる手続き

遺言書があるかどうかを探します。
遺言書がある場合には、原則として、遺産の分配方法は遺言書の記載に従うことになります。

→遺言書の詳しい探し方の詳細

7.遺言書の検認手続

→ 遺言書発見後速やかに 任せるべき専門家は司法書士、弁護士

見つかった遺言書が公正証書遺言ではなく自筆証書遺言(手書きのもの)や秘密証書遺言である場合には、家庭裁判所に検認の申立てが必要となります。検認の申立てをしないと、相続による不動産の名義変更や銀行口座の名義変更に遺言書が使えませんので速やかに検認手続きを行いましょう。また遺言書の検認が終わるまで封がされている遺言書を開封してしまう行為は、法律上禁止されていますのでご注意下さい。

→遺言書の検認手続きの詳細

8.相続人を調べ、各相続人の法定相続分がいくらになるかを知る

→ 期限3か月以内 任せるべき専門家は司法書士、弁護士、行政書士

相続人を確定させるためには、故人の出生から死亡までつながる戸籍全て及び各相続人の現在の戸籍を取得することによって、相続人を確定させます。時間的制約があるので専門家に任せるべきと記載しましたが、ご自身でできる手続きであります。故人の出生から死亡までの戸籍を辿ることによって、婚姻前の隠し子又は婚姻外の隠し子が発見されることもあるため注意が必要です。もし、隠し子がいることを知らずに遺産分割協議をしてしまったら、相続人全員で遺産分割協議をしていないため、遺産分割協議をやり直さなくはいけません。

相続人を確定させるために集める戸籍は、不動産の名義変更、銀行や株などの口座変更、生命保険の受取にも必要になりますのでできるだけ早めに取得しましょう。

→原則的な各相続人の相続できる割合の詳細

9.借金など負の遺産がないか調べる

→ 期限3か月以内 任せるべき専門家は司法書士、弁護士

故人の銀行口座に消費者金融やクレジット会社の名前があり、借金が疑われる場合などは信用情報機関に個人情報開示請求して徹底的に調べる必要があります。

→借金を徹底的に調べる方法の詳細

信用情報機関に開示請求してもわからないのが保証債務や知人からの借金。保証人になっているかどうかは契約書を確認するしか手段がないので、家の中をくまなく探しましょう。故人の知人への聞き取りもしっかり行いましょう。

住宅ローンの返済途中の故人が亡くなってしまった場合は、加入している団体信用生命保険により完済するのが通常です。

→住宅ローンが残っている場合の詳細

その他未納の税金、所有している不動産の固定資産税及び管理費の滞納がないか併せてチェックしましょう。

10.生命保険に基づく死亡保険金請求手続き

→ 時効は3年 ご自身でできる手続き

死亡保険金を請求することができる場合は、まず、その保険会社に電話します。この際、生命保険の証券番号を聞かれますので手元に保険証券をご準備下さい。

後日、保険会社から必要書類等が送付されてきます。

送られてきた書類に必要事項を記入押印し、用意した必要書類と一緒に返送することになります。

用意しなければいけない必要書類として、死亡診断書故人の除籍謄本、死亡保険金を受取になられる方の印鑑証明書保険証券等です。各保険会社により若干違いがありますのでご注意下さい。

11.相続財産がいくらあるのか調べる

→ 期限3か月以内 任せるべき専門家は司法書士、弁護士、税理士

まず相続財産は、どのような種類の相続財産があるのか全体像をを確認しておきましょう。

1.土地、建物など不動産

2.現金・商品券・切手・プリペイドカード

3.銀行預金

4.株、公社債、投資信託など有価証券

5.仮想通貨、FXの口座

6.車、貴金属、家財道具(電化製品)、着物など動産

相続財産を調べる上で、大切なことは影響力の高いものを優先して調べることです。

12.相続放棄をする

期限原則3か月以内 任せるべき専門家は司法書士、弁護士

相続とは、プラスの財産も借金などのマイナスの財産も全て引き継ぎます。

プラスの財産よりも借金の方が多いと相続したくないと思いますよね?

また付き合いの全くない親族の相続人となったときは関わりたくないと思うこともあるでしょう。

このようなときは相続放棄をすることをオススメ致します。

相続放棄とは、必ず家庭裁判所でする手続きのことを指します。

遺産分割協議や相続分の譲渡で単にプラス財産を放棄する趣旨で印鑑を押印することは相続放棄とはいいません。

この違いをはっきりと理解することが大切です。

遺産分割協議でプラス財産を放棄するとしたとしても、借金などのマイナス財産はしっかりと引き継ぎます。借金を相続したくないのであれば家庭裁判所で相続放棄の手続きをしなければなりません。

そして家庭裁判所で相続放棄の手続きをすることができるのは、自己のために相続の開始があったことを知ったときから原則3か月以内です。

相続放棄をすれば借金というマイナスの財産だけなく、プラスの財産を含めた一切の相続権がなくなります。つまり、相続放棄をした人は、その相続に関しては、はじめから相続人とならなかったものとみなされるわけです。

→相続放棄の詳細

森橋司法書士から一言!

相続放棄するべきかの判断で、注意すべきマイナスの財産とは連帯保証人などの法的な地位も含むということです。プラスの財産を引き継いだ後に、故人が保証人になっていることがあとでわかり、莫大な金額を請求されるケースがあります。そしてその時には相続放棄ができないなんてことにならないように、今一度故人が誰かの保証人になっていないかどうか徹底的に調べましょう。

 

13.遺産分割協議をする

任せるべき専門家 司法書士、弁護士、税理士

故人の遺言書がなく、相続放棄もしないと決まりましたら、相続人全員で遺産をどのように分配するかの話し合いをします。

遺産分割協議書は不動産の名義変更、銀行口座、証券口座の名義変更、自動車の名義変更、相続税の申告で必要となりますので書類に不備がないようにしましょう。相続人全員の署名捺印(実印)及び印鑑証明書が必要となってきます。印鑑証明書については多くの金融機関が3か月以内のものを必要としてますので印鑑証明書の日付にも気を付けましょう。

専門家については、遺産に不動産が含まれている場合は司法書士、相続が紛争になっている場合には代理交渉ができる弁護士、相続税の申告をする場合は税理士を選択するのが一番よいかと思います。

相続人に未成年者が含まれている場合は特別代理人選任の申立て、遺産分割協議がまとまらず紛争に発展してしまった場合には遺産分割調停の申立てが必要となります。

14.不動産、銀行口座等の名義変更をする

任せるべき専門家 不動産については司法書士

ここまでくると、戸籍関係、遺産分割協議書、印鑑証明書等主要な書類は集まっておりますので、これらを使って各遺産についてスムーズに名義変更を行うことができます。しかし、ここにきて必要書類が集まっていないと手続きが滞ってしまう原因となります。メインとなる重要度の高い名義変更は次のとおりです。

1.不動産;申請書を作成し必要書類を添付して法務局に申請します。

2.銀行口座、証券口座;申請先となる各金融機関に連絡し、名義変更に必要な書類を送付してもらい手続きを進めていきます。

3.普通自動車;申請先は運輸支局又は検査登録事務所。軽自動車については、普通自動車の名義変更に必要な遺産分割協議書や戸籍、印鑑証明書といったものは必要なく、手続きは非常に簡略化されております。

不動産の名義変更については、申請書を一から作成する必要がありますので、ご自身でするにはやや難易度が高いですが、銀行口座、証券口座並びに自動車についてはご自身でできる手続きだと思います。最初に不動産の名義変更を行えば、申請に使用した必要書類は全て戻ってきますので、それらを使って他の遺産の名義変更をするのが一番効率がよいです。

15.準確定申告

期限4か月以内 任せるべき専門家 税理士

通常の確定申告は、1月1日から12月31日までの所得について、翌年の定められた期間(2月16日から3月15日まで)に申告しますが、故人の場合、本人が申告することができなくなります。この場合、本人に代わり相続人が申告することを準確定申告と呼びます。

準確定申告も通常の確定申告と同様に、以下の要件に当てはまらない会社員などの方は年末調整が行われますので、申告する必要はございません。

準確定申告が必要になるケース

□ 個人事業主

□ 給与所得が2000万円以上の場合

□ 給与所得と退職所得以外の所得が20万円以上の場合

□ 同族会社の役員やその親族等で、給与のほかに貸付金の利子や家賃などを受け取っていた場合

16.相続税の申告

期限10か月以内 任せるべき専門家 税理士

相続税が必要となる場合とは?

国税庁のホームページを見ると、

相続税は、相続や遺贈によって取得した財産及び相続時精算課税の適用を受けて贈与により取得した財産の価額の合計額(債務などの金額を控除し、相続開始前3年以内の贈与財産の価額を加算します。)が基礎控除額を超える場合にその超える部分(課税遺産総額)に対して、課税されます。

としています。基礎控除額とは、

3000万円+600万円×法定相続人の数

となりますので、この基礎控除額を遺産総額が超えそうな場合は、相続税の申告が必要かどうか慎重に検討すべきでしょう。反対に、遺産総額がこの基礎控除額に遠く及ばないようであれば、相続税のことは気にしなくてよいでしょう。

17.遺族年金の受給手続き

時効5年 ご自身でできる手続き(相談するなら社会保険労務士)

故人が会社員・公務員であった場合には、遺族基礎年金及び遺族厚生年金が保証の対象となります。故人が会社員・公務員でなく、国民年金に加入していた場合には、遺族基礎年金のみ保証の対象となります。それぞれ受給期間は異なりますが、遺族年金の受給手続きを忘れずに申請するようにしましょう。

→遺族年金についての詳細

相続手続きにおいて司法書士がお手伝いできる具体的な手続き(まとめ)

以下に司法書士がサポートできる相続手続きを挙げております。ご覧になっていただければお分かり頂けますように、相談手続きの大半を司法書士がサポートすることができます。

相続手続きでわからない点があればまずは森橋司法書士事務所にご相談ください。

宜しくお願い致します。

1.遺言書の検認手続き

2.遺言執行者選任申立

3.相続放棄

4.相続人の調査(戸籍収集手続き)

5.不動産の相続手続き

6.遺産分割協議書作成

7.預貯金・有価証券の相続手続き

8.被相続人が会社役員の場合は役員変更登記

9.遺産分割調停(書類作成のみ)

10.被相続人に借金がある場合の調査

11.法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出