相続した不動産をすぐに売却したい場合でも相続登記しないといけない?
相続した不動産をすぐに売却する場合でも、
✖ 被相続人名義→買主名義
〇 被相続人名義→相続人名義→買主名義
と、一旦相続人名義にしなければなりません。
では、不動産を売却してその売却代金を相続人全員で分配するような場合、
「相続人全員」の名義にしなければならないでしょうか?
「相続人全員」の名義にしてしまうと、
売却に関する手続きについては、「相続人全員」の関与が必要となってきます。
例えば、売買の決済日には「相続人全員」が出向く必要があるでしょうし、
必要書類(印鑑証明書等)についても「相続人全員」分必要となってきます。
そうなると、
相続人の一人が海外にいたり、
相続人が多数いたりすると
売却手続きが困難となってきます。
そこで、相続人の代表者を一人決めて、
便宜代表者一人の単独名義にした上で
売却、換価、分配を代表者が単独で行う方法が考えられます。
これができるととても便利ですね。
しかし、この方法をとった場合に、
売却代金を代表者である相続人から他の相続人へ分配することが
贈与にあたるんでないの?贈与税かかるんではないか?
という問題が起きます。
これに対して、国税庁のホームページの質疑応答によると、以下のとおり「贈与税の課税が問題になることはない。」と回答されております。遺産分割調停の事例となりますが、遺産分割協議においても変わりはないでしょう。
ただし、国税庁のホームページにおいて注釈もありますが、一般的な回答であり、同じ見解が保証されるというものではありません。
相続した不動産を相続人の一人の単独名義にして売却換価して分配した場合、遺産分割協議の内容、個々の事案によっては贈与税が発生する可能性を完全に否定することはできません。また、不動産を売却すると譲渡所得税がかかります。代表者の譲渡所得税が不動産全体の売却益にかかってしまうのかという問題もあります。
したがって、当該手続きをとられる場合は、下記の遺産分割協議書のひな形を参考に事前に管轄する税務署、税理士にしっかり確認した上で実行されることお勧めします。当事務所もそのように運用しております。
【照会要旨】
遺産分割の調停により換価分割をすることになりました。ところで、換価の都合上、共同相続人のうち1人の名義に相続登記をしたうえで換価し、その後において、換価代金を分配することとしました。
この場合、贈与税の課税が問題になりますか。
【回答要旨】
共同相続人のうちの1人の名義で相続登記をしたことが、単に換価のための便宜のものであり、その代金が、分割に関する調停の内容に従って実際に分配される場合には、贈与税の課税が問題になることはありません。
国税庁ホームページ→https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/13/01.htm
相続人の一人の単独名義にして換価分割する場合の遺産分割協議書のひな形
以下の遺産分割協議書は、相続した不動産を売却換価する目的で相続人の一人の単独名義にする内容のものとなります。
遺 産 分 割 協 議 書 平成〇〇年〇月〇日被相続人甲野進次郎※①(本籍地 大阪府高槻市〇〇〇町〇〇番地)の死亡により開始した相続における相続人全員は、被相続人の遺産について、次のとおり分割することに合意した。 1、次の不動産※②は、相続人 甲野 武 が相続する。 所 在 茨木市〇〇〇一丁目〇〇〇番地〇 2、相続人 甲野 武 は、前項の不動産を速やかに売却換価するものとし、その換価金から売却に要する一切の費用(不動産仲介手数料、登記手続費用、譲渡所得税等)及び売却が完了するまでに要する管理費用(固定資産税、都市計画税等)を控除した残金を、相続人全員の間で、次のとおり分割し、取得するものとする。 平成〇〇年〇月〇日 住所 大阪府茨木市〇〇町〇番〇〇号 住所 大阪府吹田市〇〇二丁目〇番〇号 住所 大阪府茨木市〇〇町〇番〇〇号 |
※①誰の遺産分割協議であるのかを特定するために被相続人の本籍地を記載します。
※②不動産については住所ではなく登記事項証明書記載どおりの地番を正確に書きます。固定資産税評価証明書の不動産の表示は地番で記載されておりますが、登記事項証明書と地目地積が異なることがありますので注意しましょう。登記申請は不動産の表示が登記事項証明書記載どおりであれば間違いなく通ります。
※③後日の紛争を防ぐためにも、遺産分割協議書は相続人分作成し、相続人各自が大切に保管するようにしましょう。
※④相続人全員が署名し、実印を押印します。
遺産分割協議書のWordファイルのダウンロード
相続人の一人の単独名義にして換価分割する場合の遺産分割協議書のWordファイルのダウンロード
遺産分割協議書のひな形一覧
▢ 遺産分割協議書の作り方・ポイント
▢ 不動産を相続
▢ 不動産を共有持分の割合で相続
▢ 不動産の共有持分を相続
▢ マンションを相続
▢ 未登記建物を相続
▢ 附属建物がある建物を相続
▢ 不動産の換価分割①(単独名義にして売却)
▢ 不動産の換価分割②(共有名義にして売却)
▢ 不動産の代償分割①(代償として金銭を支払う)
▢ 不動産の代償分割②(代償として不動産を譲渡)
▢ 預貯金を相続
▢ ゆうちょ銀行の相続(振込先を指定する場合)
▢ 一人の相続人が債務を相続
▢ 自動車を相続
▢ 遺産分割協議をする前に相続人の一人が死亡した場合
▢ 数次相続における中間省略登記
▢ 遺産分割協議証明書の書き方
▢ 数次相続の最終相続人一人の遺産分割協議証明書